うつ病は早期発見・治療だけでなく,周囲の方の接し方により回復度合いも変わってくる病です.
   周囲の理解を得て,精神的に良好な環境で治療を続ければ,回復する病気なのです.
   そのため,患者さんを支えるご家族や周囲の方の果たす役割は,とても大きいものになります.
   うつ病患者さんの治り具合は,ご家族の理解や接し方の一つ一つに影響を受けている事を知ってください.


 

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うつ病患者さんとの接し方(ご家族や周囲の方へ)

 患者さんを支える人・ご家族は,うつ病というのがどんなものなのか,どれほど理解していますか? うつ病は心の風邪などと言われますが,脳神経系の病気です.気合いや根性論で治りませんし,逆にその発想は悪化につながることもあります.うつ病患者さんに対し,特に初期治療の段階では,接し方の注意点・タブーがある事を知ってもらいたいのです.

 ご家族がうつ病というのはどういう治療ステージがあるのかを知る・・・実際に,患者さんの状態を理解する・・・.怠けているわけでなく,患者自身も悩みながら日々を送っている事を理解してくれると,鬱を患う人にとって安心して治療に専念できるのです.逆に接し方一つでも,タブーを積み重ねることで信頼を失うケースもあります.最悪の場合,危険な状態(自殺)にも陥りかねない病気だということを,重々に注意してください...


●予防・初期治療● 近年のストレス社会においては,うつ病は珍しくない病気になりました.精神科・心療内科などで適切な投薬治療や休養をとることで,復職するまで回復できる病気です.そのためにも,早期発見・早期治療が求められますので,ご家族の体だけでなくメンタル面の調子を見守ってください.

●初期治療・予後● 患者さんをバックアップするためには,ご家族や周囲の方の温かい気持ち・理解が欠かせません.まず,うつ病が「気の持ちよう・怠け」ではなく脳神経系の『病気』であり,治る見込みがあることを,患者さん共々理解し忘れないでください.また再発予防も含め,うつ病治療は一進一退です.ご家族の方は病気に関する正しい知識を持つとともに,焦らずじっくり患者さんを見守り接していくことが大切です.



■家族関トラブルと対処■ うつ病の治療上,ご家族の果たす役割はとても大きいのです.ご家族の理解や接し方・態度に,患者さんは敏感に反応し,お互いが理解し合えず治療が長引く例もあるのが実情です.ですので,患者さん本人だけにうつ病と対峙させるのでなく,ご家族も一緒になってうつ病と向き合ってください.

 家族や周囲の人との接し方のトラブル回避は,問診に家族が同席するのが効果的です.患者さんが安定しているのなら,毎回でなくて構わないでしょうが,初期の頃は付き添いがある方が良いでしょう.

 鬱の経験のない家族が,病の辛さを知るのは難しいことでしょう.鬱の実態,患者さんの病状の様子を専門医から聞き学ぶことは,接し方のトラブル回避に大きく役立つます.うつ病は休息と適切な治療で回復する病気です.一緒に病気と向き合って,共に治療生活を過ごすことで,スムーズな回復に向かえます.


 幸い私の場合,両親にうつ病で治療していることを告白した時,多少の混乱はありましたが,両親は全面的に協力してくれました.これは,母も別の病名ですが,心の病で精神科に通っていることもあり,精神病に縁のないご家庭よりは,受け入れやすい環境だったのかもしれません.

 また,私の通うクリニックと父の定期健診の通院先が同じ街にあるため,父の通院日のときには,私のクリニックにも同席してもらいます.そして家庭での様子を,先生に説明してもらいます.父から見た私の姿というのは,先生にとっても参考になり,家族の接し方や認識の浸透度も分かるので良い機会となってます.

 父に言わせれば,私は抑うつ状態のときと,調子の良いときで,かなりの豹変振りがあるそうです...また,抑うつ状態の酷いときには,父母は私に圧力をかけないようにしている,と医師に対処内容を伝えています.

患者さんと接する時のポイント
 1.励ましは逆効果です.温かくみまもりましょう
 2.考えや決断を求めることは止めましょう
 3.外出や運動を無理に勧めず,とにかくゆっくり休ませましょう
 4.重要な決定は先延ばしにさせましょう
 5.家事などの自治上生活上の負担を減らしてあげましょう
   (会話例)悪い例・・・夕食何がいい? 何でもいいよ.
        良い例・・・夕食何がいい? カレーがいい.
このように,何がいいかはっきりと答えて導くことで患者さんの負担を減らしてあげましょう.


患者さんにとって,タブーとなること
 1.患者さんやご家族が勝手に服用を止めてはいけません.
 2.「元気を出せ,病気に負けるな」など励ましや,「飯を食え,風呂に入れ」などの世話焼き,
   本人の性格・内面的なことを指摘するようなことは避けましょう.
   患者さん本人は十分考え悩み自分のことを分かっています.でもできないのが,うつ病です.
   本人がしたくない意思を伝えたら,その時は,そっとしておいてください.
   むりやり急きたてたりするよりも,ほっておくくらいの方が,良い時もあるのです.

   (患者さんやご家族が「怠けか鬱か?」見極められなくなったら,主治医に相談しましょう)

   ※一番避けたいのが,自殺です.
   些細なことでも,死を選んでしまうのがうつ病の怖いことなんです.
   実際,私も実行してしまいました.
   本当に家族の軽い行動が原因だったのです.
    希死念慮・自殺念慮についてや,治療中の危険な時期について


ご家族が共倒れしないように
 ここまでの内容が無理難題だと感じる,または深刻に受け取ってしまったご家族へ
 次に心配なのは,うつ病患者さんへの対応・介護に疲れて,共倒れ・介護うつを併発することです.

 1.ご家族が躍起になって治そうとしない.まずは専門医に任せましょう.
 2.患者さんを放って置いてもいい時もあります.ご自身の時間も持っていいんですよ.
   (※ ただし自殺の危険性もあるのがうつ病.家に長時間1人きりにはしないのが大事です)
 3.時々でいいので,一緒に病院に受診し,現状況を把握してください.
 4.患者さんと衝突したら,お互い距離を取ってみる.お互い罵倒していたら共倒れします.




 ご家族にできることは,まず落ち着くこと.そして「うつ病」の対処法を知ることです.
 ほんの些細な事がきっかけで・・・自殺を実行してしまう.それが誰にとっても最も避けたい事です.家族はどう接していくのが良いか,悪化を防ぎ回復へ進むためのマニュアルです.

第1章 自殺したい気持ちや行為をどう捉えるか
(なぜ人は自殺をしてしまうのか
当事者のうつ状態の苦しさを理解する ほか)

第2章 うつ状態を悪化させ、“死にたい気持ち”を生じさせやすいもの
(個人の持つ対処の癖(表面飾りとしがみつき行為)表面飾り ほか)

第3章 具体的対策
(どこをゴールとするか
兆候への対応では限界がある ほか)

第4章 ケーススタディ
(リストカットへのしがみつきのケース
新型うつと呼ばれるケース ほか)






 苦しんでいる人から相談を受けた時,愚痴を吐露し始めた時,あなたは普段どうされていますか?
 1,じっくりと静かにうなずきながら話を聞く.2,ある程度聞いたら,自分の体験談を相手に押し付けるように話し始める.
 どちらだと相手は救われるでしょうか.

 うつ病は,医師とカウンセラーといった医療従事者,そして家族など身近な人々の【協力】があって,はじめて効果的な治療ができます.何よりも周囲の人に求められるのは【傾聴】する態度と,少しでも【共感】する力.サポート側の人にとって,相談されやすい人になることが,治療でも効果的なんです.

第1章 相談しがいのない人たち

第2章 なぜうまく相談にのれないのか
    ―問題解決指向のアプローチの限界

第3章 どんな言葉をかけたらいいか
    ―効果的なメッセージの与え方

第4章 実践ステップ1 相談者の味方になる

第5章 実践ステップ2 自信を取り戻させる

第6章 実践ステップ3 解決のヒントを与える

第7章 うつ状態の人への対応

第8章 ケーススタディ「1時間相談法」の成功例