うつ病は治療可能な病気です.
   家族や周囲の理解を得て,治療を続けて受ければ治る病気です.
   うつ病治療の基本は「休養」と「投薬」です.
   ここでは投薬治療の簡易経過モデルを説明します.

 

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うつ病の治療の基本

 うつ病は,早い段階に適切な治療を受ければ治る病気です.しかし,筆者のように気づかないまま放っておくと慢性化しやすく,再発しやすい特徴があります.うつ病や心の病気を治すには,抗うつ薬などの投薬治療が主な治療方法です.

 うつ病の治療ステップ図(Kupfer DJ.1991より)を説明します.正常な状態からうつ病が悪化し,急性期治療を受けることで回復に向かいます.ほぼ病症が安定すると寛解といい,さらに完全回復まで投薬治療を継続します.回復後は再発予防に6ヶ月〜数年ほど投薬治療などを続けます.この間,回復までにうつ病をぶり返すことを再燃,回復後に新たに別のうつ病エピソードによって,発病することを再発と呼んでいます.
 (実際の医療現場では,正確に寛解と回復の区別をする判断は,大変難しいようです.また,治療期間は症状や治療体制などに左右され,人によってもっと治療時間がかかる場合もあります.)


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 ただし,いくら投薬治療を続けても,うつ病発症のきっかけとなったストレスを受け続けている状態では,明瞭な効果は得られません.お薬を飲みつつ,十分な「休養」をとることも必要です.軽度で短期的な治療で働きながらでも治せる場合もあれば,長期にわたる休みが必要になる場合,また家庭で治療しきれない場合は入院することもあります.治療をスムーズにするためにも,心の負担になるような環境(学校・会社・家庭など)の調整が必要です.医師と相談しながら,病気の程度や生活スタイルに適した治療をしていきます.




<うつ病治療が必要なら>
 ●少しでも早く医療機関に相談する: うつ病は適切な治療を早期に受ければ,良くなります.
  症状に心当たりのある人は,少しでも早くお医者さんへ.

 ●医師とよく相談して薬を飲みましょう: お薬の効果が得られるのに2〜4週間かかります.
  また投薬初期は効果より副作用がでますが,効果が得られる頃には副作用も弱まります.
  それまでは,お薬を信じてみて医師の処方の通り飲み続けてください.

 ●回復を焦らない: 図を見てください.症状が良くなるには時間がかかります.
  順調に良くなれば3ヶ月程で寛解しますが,寛解後も6ヶ月〜1年以上の再燃予防のための継続治療をします.
  なお,ストレス負荷が続いている状態の場合,予想以上の時間がかかることもあります.
  うつ病は良くなったり悪くなったりを繰り返しながら回復に向かいます.
  随分良くなったと思っていても,精神面で感情の起伏などはありますから,些細なことでも再燃・再発することもあります.
  無理せず・焦らず・じっくりと病気の治療に専念し,自分の精神状態を整えていきましょう.

 ●自分の判断で治療をやめない: 治療には,十分量の薬の服用が大切です.
  また図の回復後でも再発予防のために6ヶ月〜数年ほど投薬を続けます.
  薬とのお付き合いが長くなると,自己判断やたまたま忘れて薬を飲まなくなる可能性が高くなります.
  調子が良くなってくると,つい判っていても自分で薬を減らしたくなります(筆者もしかり).
  そこで,もし服用を止めたり減量すると,再燃・再発するきっかけになってしまいます.
  もし,薬を減らしたい,変更したいと思ったら,医師と相談して今後の方針を決めるのが再燃・再発予防になります.






うつ病は治る―患者さん・ご家族のために

渡辺先生のうつ病解説書.私が最初に読んだ参考書!
私が最初に「うつ病」を理解するために読んだ総合的な解説書です.うつ病と不安性障害との合併症例に有効な薬物療法や薬以外の治療法,子ども・女性・高齢者のうつ病,治療が終了したあとの予防治療,そして,社会復帰のタイミングの見解などを大幅加筆されました(5訂版).
【目次】
 うつ病とは
 うつ病者と正常者の“落ち込み”はどう異なるか
 うつ病の早期発見のために―意外に多いうつ病患者の実態
 うつ病はどうして起こるか
 うつ病の症状
 うつ病の経過
 うつ病の種類
 老年期のうつ病
 女性のうつ病
 うつ病の誤診―不安と抑うつ
 医師は何をすることができるか
 医師がすべきこと、してはならぬこと
 患者さんができること、すべて
 家族は患者さんにそう接したらよいか
 うつ病の予防
 うつ病に関する65の質問