近年増加している,仮面うつ病,軽症うつ病 |
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バブル崩壊後,多くの企業がリストラ策に乗り出し,また近年は成果主義が導入されたため,働く人の環境が随分と変りました.一方,子供たちの環境も,数十年前と比べると随分と変りました.ゆとり教育の反動で,学力低下を恐れ塾通いが加熱し,私立中学への受験も当たり前のような風潮になってきました.大人の世界も子供の世界も,ゆとりどころか,過酷で熾烈な『競争』概念が一般化されてきた,といっても過言ではない世の中になりました.
先のページで述べたように,うつ病の症状には大きく分けて,精神面に出る症状と,身体面に出る症状に分けられます. このうち,ゆううつ感などの精神的な変調が目立たず,全身の倦怠感,食欲低下,肩こり,腹痛など,身体的な症状の方が顕著に出るうつ病のことを一般的に『仮面うつ病』と呼んでいます.うつ病本来の精神面の症状が,身体・肉体的な症状という「仮面」の下に隠れてしまっていることから,この名称が使われています. 私の場合も,深刻な大うつ病の段階に進行する前,人生で初めての肩こりに悩みました.マッサージや入浴などでは改善されず,必ず精神的に辛いときに,肩こり症状が数日間続きました.このとき,もっと早く精神科・心療内科を受診していれば,うつ病の進行を食い止めることができたと思います. 実際の診療の場合,仮面うつ病という病名は滅多に使われず,軽症うつ病,または抑うつ状態・うつ状態とも診断されるようです.身体症状から,正式にメンタルケアが必要と判断されれば,早期発見・早期治療により,心の病は回復も早く進みます. ですが,実際多くの人が私のように,身体症状は「ただの疲れ・肉体疲労」とあなどって考えてしまい,まさかうつ病のシグナルだとは思わないのが多いようです.そのため,内科・整形外科などに受診し,治療を受けても症状が改善されないまま,病が深刻化してしまうケースも少なくありません. 仮面うつ病の早期発見ポイントを挙げます. ・体の症状に悩んでいるが,検査をしても原因不明 ・内科,整形外科で治療中だが,改善されない ・病院めぐりをしている ・複数の科を受診している ・身体症状に日内変動がある (午前は調子が悪いが,夕方以降に元気になる) ここまでは,患者さん本人が自覚できる症状です. 注意すべきは,日常の行動の変化です! ・朝,新聞を読まなくなった(朝刊シンドローム) ・いつも見ていたTVを見なくなった ・好きな趣味に取り組まなくなった ・外出をしなくなった ・化粧をしなくなった ・仕事に集中できなくなった ・仕事でミスが多くなった もし上記の項目に合致する人,前のページで紹介したような,「うつ病になりやすい性格」である人,大きな環境の変化などがあった人,そして身体症状がなかなか改善しない人,,,精神面での症状が出ていなくても,もしかすると,心の病,仮面うつ病の場合が考えられます.心当たりのある人は,専門医に相談してみましょう. |